
一般的に「カーボン=軽い」というイメージがありますが、これは間違いではないものの本質ではありません。
カーボンフレームの魅力は、軽く作れることに加え「意図した性能を作り込める素材」であることにあります。
カーボンは“場所ごとに性格を変えられる”素材

軽量化に加え、カーボンファイバーが他の素材に比べて持つ最大のメリットは、成形形状の自由度が無限大であることです。形状によって特性が異なり、強度、剛性、空力性能が向上します。
フレームは場所によって求められる役割が異なります。そのため、単純に強度が高ければ良いわけではありません。
・BBまわり → 力を逃さない高い剛性
・ヘッドチューブまわり → ステアリング精度
・シートステー → しなり=快適性を生む
・トップチューブ → 全体バランス

硬いカーボン、柔軟なカーボンを組み合わせて設計することで、同じ素材でもまったく違う性格のフレームを生み出せるのがカーボンの強みです。
- 高弾性 → パワー伝達
- 低弾性 → しなりと振動吸収
これらを狙い通りに混ぜ合わせた結果が、そのフレームの乗り味として現れます。
レイアップ設計で乗り味は変わる

製造時、カーボンシートは角度を変えながら積層されます。この積み方(レイアップ)により得意な方向が変わります。
- 0° = 推進力・縦剛性
- 45°= ねじれへの強さ
- 90°= 横方向のしなり・振動吸収
もし繊維が透けるフレームがあれば、角度の異なるレイヤーが重なっているのが見えるはず。
同じ重さでも「積む順番」と「角度」で性格が変わる―金属ではできない設計自由度です。
フレームは一体ではなくパーツの集合体

OCLVカーボンフレームは複数のピースに分けて作られます。
例)ヘッドチューブ〜トップチューブ前半、
トップチューブ後半〜シートステー周り、
ダウンチューブ〜BB、
左右リアバック…など(モデルにより異なります)
複数のピースをつくる手間とコストは増えますが、メリットは品質管理。
樹脂ムラや気泡などの不良をパーツ単位で早期に検知できるため、完成品のバラつきが少なく、乗り味の再現性が高くなります。(目視のしやすさ、パーツ毎の重量管理が行いやすいメリット)
さらに、このピースを組み合わせる技術も極めて高レベルなものです。各ピースの嵌合部分は段階的に薄く作られており、各ピースが組み合わせられても厚みと強度が均一になるよう製造されています。
OCLVは素材名ではなくTrekの製造思想

Trekのカーボンにある「OCLV」は、Optimum Compaction Low Void Carbonの略。
最適な圧縮成形でカーボン層間の隙間(ボイド)を徹底的に抑える技術体系の呼び名です。
高温圧縮時に微細な隙間/気泡が残ると、設計通りの剛性が出ないうえ、破損の原因にもなりえます。
その精度こそメーカーの腕の見せどころ。Trekが生涯保証を提示できる理由は、この製造精度にあります。
また、OCLV900やOCLV500という数字は素材名ではなく「完成品質の階層」を表す指標。
1本のフレームに複数メーカーの複数種類のカーボンを混在させるため、素材名ではなく品質ランクで分類しているのです。OCLVレベルが高いほど、製造されたフレームが同等の強度を達成するために必要な材料が少なくなります。(結果軽量なものが出来上がります)
・OCLV900=現在考えられる最高の理想性能のために素材や積層・工程管理を徹底
・OCLV500=同品質思想で最適化したスタンダードグレード
どちらも「Trek基準でどう仕立てたか」を示す言語といえます。
まとめ

カーボンフレームの本当の魅力は「設計できる素材であること」。
積層角度、素材配合、接合技術、品質管理。その総合設計が乗り味を決め、価格にも反映されます。
Trekはその思想と製造基準をOCLVという形で明示し、品質ごとにOCLV900/800/700/600/500/400とグレード化しています。
つまりカーボンフレームは素材ではなく「思想と技術で選ぶ」もの。
Trekはそれをわかりやすい形で提示しているブランドです。
